捜索苦闘/絆大切に支援/住民主体の復興を
東日本大震災から11日で半年となる。阪神大震災の経験を踏まえ、東北の被災地に駆けつけた人たちの思いと今後の課題を聞いた。(東礼奈、諏訪智史、古市豪、川添響子、南部さやか)
■神戸市消防局警防課警防係長 八代谷(やしろたに)徹さん(48)
宮城県南三陸町などで行方不明者の捜索にあたりました。町がなくなり、被害が広範に及ぶ光景に、いったいどこを捜せばいいのか、と途方に暮れました。壊れた家屋の中に人がいるとわかって活動できた阪神大震災の時とは違いました。
被災者からの聞き取りを基に、津波で押し上げられたがれきが散乱する山の中で捜索を行いましたが、不明者はなかなか発見できません。一方で、埋もれていた写真や貴重品を掘り出し、分類しました。役に立ってないのではという思いが募りましたが、ある女性に「思い出を見つけてくれた」と感謝され、これも人助けなのかと思いました。
今回は、阪神を教訓にできた緊急消防援助隊が全国から駆け付けました。今後は警察や自衛隊などと連携し、迅速に動ける態勢をつくる必要があると思います。
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神戸市消防局からは、4月24日までの45日間、陸上部隊延べ3742人が被災地に出動し、人命救助などを展開。航空隊は傷病者の搬送などに協力した。
■被災地NGO恊働センター代表 村井 雅清さん(60)
岩手県釜石市で先日出会った高齢女性のことが心配で頭から離れません。女性は津波で家族を失い、独りになりました。私たちの足湯サービスを受ける間、目はずっとうつろでした。
仮設住宅への入居が終了し、今後は孤独を抱える被災者への見守りが必要になります。阪神大震災でもそうでしたが、初盆を過ぎると、犠牲者を悼む気持ちに区切りがつき、生きることへの不安が芽生えてきます。
しかし、今、被災地ではボランティアが足りません。ボランティアは難しくありません。声を掛けられなくても、寄り添うだけでいいのです。相手を思いやり、勇気付けたいと行動するだけでいいのです。被災地には経験豊富な人がいるので初めてでも大丈夫。今こそ一人でも多く現場に飛び込んでほしいと願っています。
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阪神大震災直後に結成されたNGOを母体に設立。国内外で支援実績があり、東日本大震災では、降灰被害に苦しむ宮崎県の農家の野菜を買い取って送ったり足湯を提供したりするなどの支援を行っている。
■東灘地域助け合いネットワーク理事長 村山メイ子さん(57)
阪神大震災後の神戸では、東北から大勢のボランティアが駆けつけてくれました。この半年間は恩返しの気持ちを込め、手作り品の提供を呼びかけ、7月に手提げかばんやかっぽう着、草履など約600点を宮城県に届けてきました。
手作り品は、東京や千葉など全国各地から届きました。「現地には行けないが、何かしたい」と考える人は想像以上に多く、そうした助け合いの輪を今後も広げていくことが、東北の復興や将来の防災にも大事だと実感しました。
阪神大震災でも10年が過ぎると、「いつまで震災を引きずっているんだ」と言われます。でも、「阪神」を忘れなかったからこそ、今回の支援があるのです。
10月には、第2弾として手編みのレッグウオーマーなどを送るつもりです。東日本大震災をずっと忘れず、息の長い支援を続けようと思っています。
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1995年2月、地元ボランティアらで結成したNPO法人。99年から東灘区の「御影市場旨水館」で手作り市などを行い、今月29日にはカフェを開く。
■関西広域連合・広域防災局長 藤原 雅人さん(58)
関西広域連合を構成する7府県が、被災した自治体の担当を決めて、人やモノを送り込む「カウンターパート方式」による支援をしてきました。それぞれの知識や経験を共有できたし、将来まで責任を持って支えていく形を整えられたと思います。
今後は、被災者の自立支援が重要になると考えています。阪神大震災の被災者支援に10年以上携わってきた中で、「住民主体の町づくり」の大切さを感じてきました。その地に住む人がどんな街にしたいかを考えていくことが基本です。行政としては、コミュニティーの形成を手伝うNPO法人に協力するなど裏方に徹したいと考えています。
震災後、衰退すると心配された神戸も、一歩ずつ前に進んで今があります。東北は、これから本格的に復興が始まる時期。時間はかかると思いますが、必ず復興できるはずです。
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兵庫、大阪、京都、滋賀、和歌山、徳島、鳥取の7府県で2010年に設立。被災地にはこれまで、警察官延べ15万人、医師や看護師ら同7000人などを派遣した。
■阪神淡路大震災1・17希望の灯り代表 堀内 正美さん(61)
洋服と生活必需品に手紙を添えた「贈り物」を被災した方に手渡しする「たすきプロジェクト」を続けています。国内外に呼びかけ、これまでに寄せられた贈り物は約4万個。岩手県陸前高田市など10か所以上に届けました。
阪神大震災で全国から寄せられた古着は、サイズが合わなかったり汚れたりしたものがあり、受け取って惨めな思いをした人もいました。その経験から、贈り物を入れるバッグには必ずサイズや年代を書いた荷札を付けています。また、手紙は交流を生むきっかけになっており、被災地の人たちと親戚付き合いをしているような絆を感じます。
仕事を失い困窮している人や買い物に困っている人はまだ多く、支援は必要です。10月からは冬物衣料を募集します。絆を大切にしながら、長く被災者を支えていくことができればと思います。
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阪神大震災の遺族らでつくるNPO法人。たすきプロジェクトは、神戸市兵庫区のホームズスタジアムを拠点に、遺族やボランティアが仕分けや発送作業を行う。
(2011年9月11日 読売新聞)
posted by NETMKスタッフ at 08:30| 兵庫 ☀|
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